覚悟の石?それとも・・
「ゴメン、犬を譲れなくなったの」と、長年一緒に旅をしてきた友人から電話が来た。
「どうしたの?何かあったの?」と、受話器の向こうに尋ねる私の胸の中から何かが「コロン」と転がり落ちた。
「・・ん?・・」
握りこぶし大の石が、私の胸の中から転がり落ちた・・そんな感じがした。
ガンの再発を繰り返す友人から飼い犬(老犬)を引き受けて欲しいとお願いされた時、私はすでに人生の最後に向かって生きて居た。
周囲はみんな、早すぎる、その歳で・・と言うが、20年も共に暮らした老猫の看病が終わってホッとしたはずなのに、生きる意味を見つけられずにいた。
友人はそんな私だから、自分の老犬の介護をお願いしたのかも知れないと今は思うが、責任を持てるだけの体力があるだろうか・・と悩み抜いてやっと引き受ける覚悟を決めたばかりだ。
友人は私に老犬を託したことを長男とそのお嫁さんに話し、自分の余命に対する覚悟と、その為に身辺整理をしていると話したと言う。
すると、それを聞いていた長男とお嫁さんが二人で彼女に懇願したらしい。
「先の心配などするな。飼い犬も飼い猫も自分たちが必ず責任を持って最後まで面倒見るから心配するな。だからお母さんは今までどうりに生活して欲しい。今までのように好きな事だけして、元気に生きる事だけを考えて欲しい・・」と・・
「だから・・ごめんね」と、友人は心配そうに言った。
「貴方が生きる希望を無くしてしまうんじゃないかって、それが心配で・・」と。
私は明るく答えた。
「優しい息子夫婦で貴方は幸せね!・・貴方は勝ち組よ。この歳になったら優しい子を育てた親が勝ち組よ、私も勝ち組だけど~(⌒▽⌒)アハハ!・・私の事は心配しないで大丈夫!・・」・・
胸の中で「コロ、コロン・・」っと、こぶし大の石が二つ転がり落ちた。
ふ~ん、三つも石があったのね。
これ・・覚悟の石?・・それとも、気力の石?・・
立ち直れそうにない・・