虫唾が走る
思い出した事からーー
野良ネコは人間不信から狂暴になる・・命がけで逃げようとする。
その野良の子を二度も取り上げた私は、その母猫には子供の仇でしかない。
こんなに愛してるのに・・・なんて言っても始まらないのが哀しい。
何度やっても野良猫を捕獲する時は足が震える。
ある時、仕掛けていた捕獲機から野良猫をゲージに移す作業に必死になっていると、それをニタニタ見ていた老人が言った。
「そんなに暇なら俺の面倒を見ろよ、生きてる人間が先だ!」
体中に虫唾が走った・・
その時、私の近くにいたボランティアの誰かが声を上げた。
ーー人には脳みそって物があるんだよ。今のお爺さんの結果は貴方の責任で、猫には何の責任も無いの・・・云々 ーー
私は弱虫の怖がり屋だから、仲間の抗議に参加もできず・・・ただただ下を向いてニンマリする・・・友よ、戦友になれなくてゴメンなさい・・・
保護されたばかりの薄汚れた大人の野良猫はどの子も怯え、どう猛だ。だから保護したばかりは自宅のゲージに入れて置く。
その時、私にやっと懐いたばかりで部屋を自由に歩けるようになっていた保護猫が、新しく来た保護猫をに飛び掛かって行った。
私はとっさに新参者の保護猫を守ろうと足を突き出してけん制し、その結果、脛に30センチほどの傷を負った。
飛びついてテリトリーを守ろうとしたその猫を抱き上げて両腕で抱くと、哀れなほどにガタガタ震えていた。
それでも私の手の中から、高く低く唸り、新参猫のゲージを睨んでいた。
哀れで愛しくて・・おしっこ臭い身体と頭を両手で抱きしめると、唸り声の合間にニャ~と哀し気に鳴く。
ーーここは私の家だよね?・・そう言ってるような・・
こんな時は泣ける・・・生きて行きたい・・ただそれだけの為に命を投げ出す動物。
いい子、いい子と赤子のように撫でると、猫は固まっていた体をやっと緩めた。
その後、引っかかれた私の足はゾウのように腫れあがった・・名誉の負傷だね。
動物病院で注射を打って貰ったら、早く来て正解だった、足を切り落とす事になりかねないほど傷が深かったと・・・
愛は痛みを忘れる・・それともボケて痛みを感じなくなったとか?・・
あ~ヤダヤダ・・
今、その猫は息子と幸せに暮らしている(^0^v