老犬の力
15歳の老犬を飼うと決めてから、迎える準備をしなきゃと覚悟した。
暇つぶしに見ていた韓流ドラマも見る気がしなくなり、何よりも体を元気に戻さなきゃ・・生きなきゃ!と、突然思った。
放って置いた心不全も肺気腫も専門医に見せなくてはならない。
手遅れになっていなきゃ良いが・・
老いた犬を介護するなら、私が夜中に咳でむせ返ってなど居られないだろう。
健康でいなきゃ・・世話をするだけの体力を取り戻さなくては、双方が辛くなる。
その為の環境を整えなきゃ・・あれもこれも片付けなきゃ・・やらなきゃ・・
頭の中がやけに鮮明になり、ジッとして居られない。
車に乗り込み・・確かあの辺に心臓の専門病院があったと探し回る。
その病院で肺気腫も検査すると言うのでお任せする事にした。
無責任な担当医を付けたら、うるさい婆さんになるわよ・・と、何やら戦闘モードになる自分がおかしい(^^;
私は・・生きる積りになったらしい・・
携帯を握りしめ、放り出して置いた問題を片付けようと電話帳を調べる。
しばらくは老犬が安心して暮らせるように傍にいたい・・その為に出歩く用事は極力減らしたい・・・あの人の用事も、この人の問題も・・あれもこれも・・
やけに頭が良く動く・・(^^;
後は野となれ山となれと、放り出して置いた事柄が余りにも多くて、何やら忙しい。
去年、飼い猫が亡くなった時に、保護猫活動用にとって置いた全ての道具を寄付した。
みい子の思い出を切り離す為もあって、ワゴン車に山と積み込んでアチコチに配って歩いた。
でも・・ブランケットくらいどこかに残ってるかも?と、押入れの中を漁るが、何も出てこない。
徹底した奴だと、自分の性格に苦笑する。
老年のみいこはボケていたので、私が呼んでも来なくなっていた。
でも食いしん坊になってたらしくて「ご飯の合図」だけは覚えていた。
食事時、その食器をカチャカチャ打ち鳴らすと、どこかからヨロヨロと出て来て、にゃ~んと鳴いた。
目が見えなくなり、臭いもかげなくなり、立つのがやっとになり、一日中どこかの陰で寝ていた。
自分からお腹が空いたと甘える体力も無くなり、ご飯の入った食器を口につけてやらないと食べ物がどこにあるのかも分からなかった。
だから、天国に行った今でも、お墓の前でカチャカチャと鳴らす事にしている。
「来たよ~、ちゅるちゅ~るだよ~」
私は・・・生きる気力を失くしていたらしい・・
そして今・・・取り戻したようだ。