暇人の独り言🍎

 70代にして思うこと・・

 
 
 
  
  
 

老いた犬

 飼い猫のみい子を亡くして一年が経った。
 20歳という年齢もあって覚悟が出来ていたからか、張り付くような寂しさは、誰もが感じるものなのだろうと胸の奥に閉じ込めた。


 先日、癌がみたび再発した友人から、彼女が飼っている老犬と老猫の今後について相談を受けた。


 私自身の歳を考えると動物はもう飼わないと決めていたが、友人が飼っている犬も15歳の老いた犬だから丁度良いかも・・
 私が先か、老犬が先かは神のみぞ知るだから、私で良ければ譲り受けると返事をした。


 彼女は嬉しそうに申し訳なさそうに「老犬はお金が掛るから、持参金を付ける」と言うが、私は笑って「持参金は要らないが、花嫁道具が良いわね」とふざけた。
 でも一つ条件がある・・
 もし私が先に逝く事になったら病院で安楽死させる積りだが、それでを了承してくれるなら責任を持って引き受ける・・
 それが私の死生観だから・・
 でも、私よりずっと若い彼女には「安楽死」と言う言葉がショックだったようで、迷ってしまった。


 老い先短い私の命で「責任をとる」とはそういう形しかない。
 老いてしまい、愛らしさよりも出て行くお金に比重が重い老犬を誰が貰ってくれるだろうか、そんな不安を残しては死ねない。


 その老犬は、友人が愛護団体から引き取り、その後の数年間を大切に育てられた。
 その犬が人間の残酷さに翻弄され、哀れな環境で育って来た事も聞かされた。
 それなのに、それでも・・愛らしい真っ黒な目で彼女を見上げ、その足元にいつも大人しく座っていた。
 その不自然なほどに健気な姿が、なぜか数年経った今でも私の脳裏に焼き付いていた。


 彼女は言った・・この犬が大人しいのは繁殖用だったからよ。
 うるさく吠えないように、喉を切られて声が出ないの・・・そして捨てられた。
 我が身に死の影を抱えている友人が語る淡々とした口調と、出ない声を振り絞って甘えようとする老犬の姿・・どうにもならない哀しみと怒りが沸々と泡立つ。
 何がお前の幸せなのか・・私はもう死に支度をしてたのに・・・


 みい子が亡くなった時、もう動物は飼わないと決めていた。
 だが、この老犬の最後には、幸せだったと思って欲しい。
 私の命が続く限り・・愛していこう・・・

×

非ログインユーザーとして返信する