猫と記憶喪失・・
久しぶりに日記を覗いて見たら、もう一年半ほどが過ぎていた。
私にはその年月の記憶があいまいで、最近多少は記憶が戻りつつ有る。
私の“記憶喪失“は、息子の飼い猫を預かった事で始まった。
息子の猫は夜中になると、息子を求めて哀れっぽく鳴き始め、夜が更けると共に迷子の子供のように保護者を求めて泣き叫ぶ・・・朝の7時ころまで。。
私は毎日毎晩・・コタツの中でウトウトするだけで二か月を過ごした。
息子の仕事が一段落してやっと・・息子を愛してやまぬその猫を引き渡した。
私の寝不足は体力的に限界が来ていたので、これでやっと眠れる・・と、心底ホッとした・・・だが、それもつかの間、今度は娘が、うす汚れた四歳になる野良を連れて来た。
老いた母親が寂しかろうと娘の気持ちがした事だから、私は苦笑いしてその猫を引き取った。
案の定、野良育ちから「飼い猫」になったその猫は、見慣れない人間の狭い部屋のアチコチを逃げ回り、隠れ回り、家中をトイレにし、夜中になると自由を求めて泣き叫ぶ。
そして私は再び二か月間、昼も夜も眠れぬ日々を繰り返すことになり、ふと、自分の言動が狂って来ている事に気が付いた。
そして娘に電話した。
これ以上この猫が懐かないなら、ママの方がボケて貴方達に迷惑を掛ける事になると・・・そして猫を地域猫に返した。
鬱病?痴ほう症?・・そう思っただけで恐怖で泣けた。
寝不足から来ていると思ってはいたが、それが引き金になってボケてそのまま痴呆に進むと聞いているから、娘にお願いして精神科に連れて行って貰った。
そして後日、判断力の低下、軽度の認知症と診断されてしまった。
それまで睡眠は私の自慢だった。
同じ年代の人たちが睡眠薬や導入剤を飲んでいるのを尻目に、私は「お休み~」と言った途端に朝が来ると嘯けるほど深い睡眠を誇っていた。
だから・・私の脳はまだ若い!と、本気で信じていた。
それなのに痴ほう症?・・猫の様に鳴き叫びたいほどのショック。
歳か・・あ~嫌だ・・
もう無理が出来ない体になったなんて、保護活動さえ出来ない体になったなんて・・
睡眠が必要な歳になったなんて・・・と、不安で眠れぬまま朝を迎えた。
そんな事を四か月も繰り返して、判断力の低下=軽度認知症と診断されるに至った。
歳をとるとは、ことほど左様に残酷なものなり。。